二階堂奥歯「八本脚の蝶」

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▶︎漸く読みました。487ページ一気に。言葉を深く咀嚼しながら。初めて二階堂奥歯なる人物を知ったのはブルータスの特集に載っていたその、書名と筆名が気になり過ぎて読みたい本リストに入れていたのです。


▶︎本屋で目的の本を探し出すことがとにかく苦手な私は大体数日で挫けてしまい、まぁこの本とはまたいつか出会ったときに買いましょう、となるのですが大体これ探しているけどない(´;Д;`)と旦那さんに言うと見つけてきてくれます。本当にありがたい。というわけで本書も探してもらいました。そして手渡された時の言葉にびっくりしました。この人これ書いてから自殺したんだってね、と。


▶︎私はその時初めてそういう内容の本であると知り、思いました。またか。と。自ら死という選択をする人の本とは惹かれ合う運命にあるのだと。私という人間の根幹にメメントモリがある限り、事実上死ぬ迄きっと死に惹かれてしまうのだろうと。今でこそ希死念慮は薄れて随分と生きやすくなったので、距離を保ちながら読めたのは良かったです。数年前ならば周りに刃物を並べて泣きじゃくりながら読んだのでしょう。


▶︎でも、時々、あ、わかる……と魂が共鳴するような感覚にも陥るので、こういう瞬間に鬱に完治はないのだな、と身をもって思い知ります。特に好きな一文を抜粋。


二◯◯二年一二月八日(日)


この景色を見ることはもう二度とないと思うと、あらゆるものに魔法がかかる。コンクリートの亀裂にたまった雨に揺れるバス停の灯り。コンビニエンスストアから溢れるまばゆい光。白線に含まれた反射性物質のきらめき。

溶けたマスカラで目の下が黒くなっても夜は暗いからわからない。雨が降っていて涙が流れていて光はみんなにじんでいる。この景色をもう見ることがないように西へ、西へ走ってください。朝に追いつかれないように、明日が来ないように、黒い涙が見られないように、暗い夜の国へ。小さな尊い光たちが灯る夜の国へ。

泣いているのは世界が美しいからです。

世界が美しいのは、失われるからです。

とても綺麗です。どうか、この一瞬にすべてが消えますように。


▶︎何度でも反芻しながら泣きそうになってしまう。こういう状態で言葉を紡ぐのは死との距離を保てなくなるから危惧しなければならないのだけれど自分を客観視していくと今は大丈夫だと分かる。


▶︎気になる方は探して読んでみてください。